雲を見上げながら、アリの行列を眺めながら、棒付きのキャンディーをなめながら、水道の水で手を冷やしながら、時折ぽつんとつぶやく。それがドリーだった。僕はそんなドリーが好きで、だからドリーと一緒にいる。ドリーが僕のことをどう思っているかはわからないけれども、それはそれでいいと思っている。

「私の羊はクローンなんだ」

ひとりごとのように、ドリーは言う。ついに空っぽになってしまった彼女のマグカップを細い指から抜き取り、僕はキッチンに向かった。もちろん、ドリーにココアを作るためだ。

「私もクローンだから」

______ “「羊、探しに行く」 唐突にドリーは宣言した。「私たちは一緒にいるからひとりじゃないけど、私の羊はひとりだから」”--真の紙小説ファンと真のウェブ小説ファンに捧ぐ、ピュアな擬人化文学十四編!(ノベルジム担当者より)

<収録作品> ●何処でもない世界の真ん中でカンガルーはココア色の雨の夢を見る ●巻貝の檻 ●クローン羊とドリーの話 ●カレーの種 ●愛していると言えたなら ●夜明けの風待ち鳥 ●30秒間の恋とランゲルハンス島またはくらげ色の月のジェラシー ●にんじんサラダ ●彼女と僕 ●うるさい部屋 ●砂色のカンガルー ●気の抜けないコーラ、など

<著者> 京極 黎(きょうごく れい) 鳥取県出身、茨城県在住の大学生。中学時代からネット上で掌編小説を書き始め、現在は生物学を学びつつ執筆活動を続けている。幼い頃から続けているヴァイオリンへの愛が高じて、大学では管弦楽団に所属。楽器を背負い、楽譜と教科書を抱えて、学内を自転車で爆走する日々を送っている。好きな食べ物はにんじん。

<ノベルジムについて> アミューズメントメディア総合学院(AMG)が運営する小説創作サイトです。出身作家著作五〇〇冊以上というAMGの教育実績を背景に、“作家を育てるプロ”がユーザーの執筆を支援します。小説力の向上という価値を軸に、ウェブ小説の新しい楽しみ方、そしてデビューチャンスを提供します。 ○公式サイト http://novelgym.jp ○公式ツイッタ